「黒毛和牛といえば霜降り」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?舌の上でとろけるような脂の旨みは確かに魅力的ですが、今、静かに“赤身肉”の時代がやってきています。その主役に浮上しているのが、「経産牛(けいさんぎゅう)」と呼ばれる、出産を経験した雌牛です。
一方で、経産牛には「硬い」「臭い」といったマイナスイメージが根強く、まだまだその魅力が知られていないのが現状です。しかし、鹿児島で黒毛和牛を育て続けてきた1129では、伝統的な「炊きエサ」と再肥育の技術により、驚くほど旨みの詰まった“赤身の経産牛”を仕上げています。
本記事では、霜降り一辺倒だった和牛の世界に一石を投じる、「赤身×経産牛」という新しい価値にフォーカス。なぜ今“赤身”が求められているのか、そしてなぜ経産牛がその答えになり得るのか──。鹿児島1129が挑む、黒毛和牛の“新常識”をご紹介します。
かつては、和牛の評価基準といえば“サシの入り具合”でした。A5ランクという言葉に象徴されるように、霜降りが多い=高級という価値観が根付いていました。しかし近年、脂の多い肉よりも「肉そのものの旨味」を求める消費者が増えてきています。
低脂肪・高たんぱくという栄養面の優位性もさることながら、噛みしめるほどにあふれる旨味こそが赤身の魅力。特に若年層や健康意識の高い層を中心に、赤身の牛肉が再評価されており、飲食店でも積極的に取り入れられています。
欧米では赤身肉こそがスタンダード。脂肪よりも「風味の強さ」で肉の価値を測る文化が根付いており、経産牛を使った熟成肉やステーキは一般的です。日本でもその流れを受け、赤身肉のニーズが着実に高まっています。
経産牛とは、出産を経験した雌牛のこと。通常は繁殖の役目を終えたあとに肉用として再肥育されることが多く、未経産牛に比べて飼育期間が長いのが特徴です。
かつては「硬い」「臭い」といったイメージで敬遠されがちだった経産牛も、再肥育や飼育環境の改善によって、驚くほど美味しく進化しています。特に1129の炊きエサは、その味と質感を大きく底上げする要因となっています。
霜降り信仰が強い日本では、赤身主体の経産牛が正当に評価される機会が少ないのが実情。表示の問題もあり、消費者にとって情報が届きにくいのもハードルになっています。
1129では、国産の米ぬか・大豆・大麦・ふすまを独自配合し、時間をかけて炊き上げる「炊きエサ」を採用。ふっくらと仕上がった餌は消化吸収が良く、肉質の向上につながります。今ではほとんど見られなくなったこの手法を、1129は敢えて取り入れています。
経産牛を肉牛として仕上げるには、ただ太らせるだけでは不十分。1129では、栄養価の高い炊きエサを与え、きれいな水とストレスの少ない環境で丁寧に再肥育を実施。牛が持つ本来の力を引き出し、赤身の美味しさを最大限に引き出しています。
脂の量よりも、肉そのものの旨味を追求した1129の経産牛。その濃厚な味わいは、噛むたびにじんわりと広がり、赤身好きにはたまらない一品です。サシに頼らず、“肉を食べる満足感”をしっかり味わえる、それが1129の真骨頂です。
大隣オーナーが幼い頃に聞いていた祖父の言葉──「本当にうまいのは赤身だ」。時代にそぐわなかったその言葉が、今の肉の流れとピタリと重なってきたことに、大隣さん自身が驚いています。
脂の多さではなく、肉の味そのものを評価する時代が来ると信じ、難しいと言われてきた経産牛の可能性に挑み続ける大隣さん。その背景には「うまい肉とは何か?」を問い続けた、畜産家としての矜持があります。
祖父の代から続く畜産業をベースに、鹿児島の自然と知恵を掛け合わせた1129の取り組み。伝統を守りながらも、挑戦を忘れない姿勢が、今の時代に求められる“新しい和牛像”をつくり出しています。
信頼できる生産者から直接購入することが、良質な経産牛に出会う近道です。色が濃く、繊維が細かく整った赤身は、味の濃さの証拠。格付けだけに頼らず、飼育背景や表示情報も参考に選ぶのがコツです。
ステーキならミディアムレアで。焼肉ならしっかり焼き目をつけて香ばしく。煮込みにしても旨味がしっかり残るなど、経産牛は調理の幅が広く、使いやすいのも魅力です。
ヒレやサーロインは初心者にも扱いやすく、赤身の魅力をダイレクトに感じられる部位。モモや肩は、ローストビーフや赤身ステーキにぴったり。素材の力を活かした料理で、経産牛の美味しさがぐっと引き立ちます。
脂より旨味、見た目より味わい。そんな“本質”を求める声が、牛肉の価値基準を変えつつあります。なかでも再肥育された経産牛は、手間ひまをかけて育てられたからこそ味わえる「赤身の深い旨み」が特長です。見た目の華やかさではなく、本当にうまい肉を選ぶ──そんな時代の価値観に、経産牛はぴったりと寄り添っています。
伝統と革新を融合させた1129の経産牛。脂ではなく、旨味で感動する一皿を、ぜひご自身の舌で確かめてみてください。赤身の時代は、もう始まっています。